Fluid Dynamics in Earth and Planetary Sciences (FDEPS)  First FDEPS Workshop  Dec 6 - 10, 1999  Graduate School of Mathematical Sciences, University of Tokyo


講演
宇宙空間での磁気リコネクション
星野真弘(東京大学理学研究科)

要旨

高温の太陽大気の膨張により作られた太陽から の風「太陽風」が惑星間空間をプラズマで満たし,太陽風 と地球磁場との相互作用で「地球磁気圏」が形成されてい ます。磁気圏のプラズマ現象には,オーロラ現象やサブス トーム現象などありますが,磁気圏の巨視的構造や変動な どは,おおむね「電磁流体力学」の枠組みで理解されてい ます。しかし,粒子間の2体衝突が無視できる無衝突プラ ズマ系で特徴付けられる宇宙プラズマ現象では,電磁流体 の枠組みを超えてもっと小さなスケールの物理過程の理解 を必要とする場合が数多くあります。その一例として, 「磁気リコネクション」と呼ばれる物理過程があげられま す。これは磁場の拡散過程を通じて,磁場のトポロジー変 化に伴い磁場のエネルギーをプラズマの運動や熱エネル ギーに変換する過程で,地球磁気圏のサブストームや太陽 コロナでのフレア現象をはじめとして宇宙の様々なところ で大切な役割を果たしていることが知られています。この 磁気リコネクションを題材に,電磁流体力学の枠組みを超 えて,つまりプラズマ組成であるイオンと電子の運動論を 理解した上で,巨視的構造や変動を理解しようとする研究 が進展してきていることを議論します。昔から意識されて いたマクロ・ミクロ結合過程の研究に新しい展開が見えて きたのは,最新のスーパーコンピュータでは数十Gflops・ 数十GB程度の計算が比較的容易に出来るようになり,数値 シミュレーションを用いて巨視的構造に包含された微視的 過程を同時に計算できるようになったこと,また高機能高 度化した人工衛星による磁気圏観測では,高時間分解能で プラズマ速度分布関数が測定できるようになったことなど があげられます。実証的に微視的過程をよりよく理解した 上で構築する磁気圏巨視的構造の最新の研究および展望を ご紹介します。


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1999/11/15 更新 (by 林 祥介)