3 可視化・解析ツールgtool4

本章ではgtool4について解説する. 3.1節ではgtool4の機能と開発思想について解説する. 3.2節ではgtool4の扱うデータフォーマットについて説明し, その基礎データフォーマットであるnetCDF形式とnetCDFの規約について説明する.

3.1 機能と設計思想

gtool4は, 1.3節で紹介した電脳davisプロジェクトが開発した, 数値データの可視化・解析ツールである.

gtool4は

という機能を提供する. これらの特徴は以下のとおりである.

3.2 gtool4形式のデータ

3.2.1 特徴

gtool4形式のデータの特徴を説明する.

上記の特徴を実装の上で重要な位置を占めるのが,gtool4形式のデータの基礎フォーマットであるnetCDFである. 次節ではnetCDFについて詳しく説明する.

3.2.2 netCDF

netCDF(Network Common Data Fortm)は,UCAR(University Corporation for Atmospheric Research)の1プロジェクトであるUnidataが開発したデータフォーマットである. netCDFの特徴のうち
は3.2.2節で示したgtool4形式に継承されている. また豊富な入出力ライブラリの存在もnetCDFの特筆すべき特徴である. netCDFにはF90,F77,C,Perl,Ruby 等 多くの言語の入出力ライブラリが存在する. これは様々な計算機環境で利用することが可能でありネットワーク的に透過性を持たせることができる. またPerlやrubyといったインタプリタ型の言語がサポートされていることは作業効率の強化を計る上で非常に有効である.

netCDFは本来Unidataが自身で提供するアプリケーション共通のデータフォーマットとして開発されたが, 現在では大気科学分野で広く活用されている. 例えばCDC(Climate Diagnostics Center)から配布されている NCEP/NCAR再解析データ は,全てnetCDF 形式になっている. また大気科学以外の分野でも利用されている. 地図作成ツールGMT(The Generic Mapping Tools)がその1例である.

3.2.3 gtool4規約

ここではgtool4規約について説明する. NetCDFに付加できる属性の内容に制限がない. そのためデータを共有するためには付加する情報の書式(例えば単位や特定の変数に対して用いる文字など)に統一性をもたせる必要がある. NetCDF規約とは, 付加する属性の内容を規定するガイドラインである.

現在代表的なnetCDF規約としては COARDS規約, NCAR CMS規約, GDT規約が挙げられる. それぞれの規約は規定する団体の研究する分野の事情を反映している. 例えば上述のCOARDS規約は気候・気象データを想定した規約であり, NCAR CMS規約は特に気候数値モデルを想定して開発された規約である.

gtool4規約は多次元数値データと可視化情報を自己記述的に格納することにに焦点がおかれた規約である. 言い替えるとgtool4の特微である可視化情報と数値データの統合, ならびにデータの構造化はgtool4規約によって成立しているのである.