目次 イントロ

要旨

熱帯に局在する暖水域が熱帯域の大規模な降水分布に与える影響を 調べるために水惑星実験を行なった. 用いた数値モデルは, T42L16 の分解能を持つ全球プリミティブモデル であり, 簡単な水過程を含む. 暖水域は, 東西一様南北対称な SST 分布をもつ海洋の赤道上 と北緯 10 度に置いた.

赤道に置いた暖水域に対する熱帯の降水分布は, 暖水域の西側での 降水減少と東側の広範な領域での増加, という東西比対称な分布とな っている. しかし, 北緯 10 度に置いた暖水域に対する熱帯の降水分布 は赤道に置いた場合と比べて東西に比対称な降水分布とはならない. 熱帯域の降水量の変動は赤道に置いた暖水域に対するものの方が 北緯 10 度に置いたものよりも大きい. これは赤道に置いた暖水域が作る低圧偏差は赤道に補足されて 形成されるのに対し北緯 10 度に置いた暖水域が作る低圧偏差は 中低緯度の局所的な領域に形成されむしろ赤道域には高圧偏差領域 が広がることが原因と考えられる. 赤道に補足された低圧偏差領域への下層の摩擦収束が水蒸気を 赤道低圧偏差領域に集め, その水蒸気がその領域の不安定化をもたらす. 赤道暖水域に対する熱帯の東西非対称な降雨の分布には赤道波の 力学が重要であると考えられる.

赤道に補足される低圧偏差領域形成の時間発展と, そこへ集積する 下層水蒸気輸送時間発展の様子を 50 日間の 128 試行アンサンブル 平均データより描き出した.