放射MTGメモ(2015/12/07)

参加者

  • 倉本圭, 石渡雅樹, はしもとじょーじ, 高橋康人, 大西将徳

系外惑星放射計算プログラムの開発 (大西)

  • 水蒸気混合大気の line-by-line 放射計算で確認された低温成層圏・高温成層圏の物理を理解するために, 灰色大気モデルによる考察を行った.
    • 灰色大気モデル
      • 対流圏は飽和.
      • 成層圏は等温.
      • 成層圏の水蒸気体積混合比は圏界面に一致.
      • 散乱なし
      • 圏界面の定圧モル比熱, 混合大気の分子量は, 窒素大気と近似
      • 圏界面に下層から入射するフラックスは, 圏界面より下層の光学的厚さ 1/beta (beta: diffusivity factor = 2) の層からやってくるフラックで近似.
      • 圏界面に入射する太陽光放射による直達光により, 圏界面での太陽光による加熱率を計算.
      • 圏界面に入射する上下からの惑星放射と, 圏界面が射出する惑星放射により圏界面での惑星放射による正味冷却率を計算.
    • 灰色大気モデルによる加熱冷却率の特徴
      • 惑星放射による圏界面の冷却率
        • 惑星放射による圏界面の冷却率は, 圏界面温度が低いときに負であり, 圏界面温度の増加とともに冷却率は増加.
        • さらに圏界面温度が上昇すると冷却率は減少し, 負となる.
        • 圏界面温度が大きな極限では, 負からゼロに漸近.
        • 惑星放射による冷却率は, 吸収断面積が大きいほど成層圏温度が低温で極大を持つ.
        • 惑星放射による冷却率は, 吸収断面積が大きいほど, 極大値から冷却率が負になるまでの典型的な温度スケールが小さくなる.
      • 太陽直達光による圏界面の加熱率
        • 太陽直達光による加熱率は, 常に正.
        • 圏界面が高温の極限ではゼロに漸近.
        • 吸収断面積が大きいほど, 加熱率が減少し始める圏界面温度は低い.
        • 吸収断面積が大きいほど, 加熱率が減少する特徴的な温度スケールは小さい.
    • 灰色大気モデルで高温成層圏は存在するか?
      • 高温成層圏が存在する条件
        • 太陽光による加熱率が減少し始める圏界面温度の方が, 惑星放射による冷却率が減少し始める温度よりも大きい
          • 太陽直達光の方が吸収断面積が小さい.
        • 太陽光による加熱率が減少する温度スケールの方が, 惑星放射による冷却率が減少する温度スケールよりも小さい
          • 太陽直達光の方が吸収断面積が大きい.
      • 上の2つの条件を同時に満たすことはできない.
        • -> 灰色モデルでは高温成層圏は存在しない.
    • 非灰色大気での高温成層圏の有無の考察.
      • 背景大気 1 bar の場合, 地表面温度 320K では高温成層圏は存在せず, 360K では存在する. この違いを考察する.
      • 加熱冷却率の圏界面温度依存性
        • 地表面温度 320K の場合には, 太陽光による加熱率と惑星放射による冷却率が一致する圏界面温度は 1 つ: 低温成層圏
        • 地表面温度 360K の場合には, 太陽光による加熱率と惑星放射による冷却率が一致する圏界面温度は 3 つ: 低温成層圏, 不安定解, 高温成層圏
        • 太陽光による加熱率の圏界面温度依存性は, 地表面温度依存性が小さい
        • 惑星放射による冷却率の圏界面温度依存性は, 地表面温度依存性が大きい
          • 地表面温度 360K の惑星放射による冷却率が, 圏界面温度 140 - 180K 付近で, 地表面温度 320K の場合と比べて低下していることが高温成層圏解を作っている.
      • 惑星放射による冷却率の圏界面温度依存性の地表面温度依存性
        • 惑星放射による冷却率はある圏界面温度で極大値を持ち, さらに圏界面温度が上昇すると低下する.
        • この冷却率の極大から低下の振る舞いは, 成層圏からの下向きフラックスによる加熱率の圏界面温度依存性が決めている.
        • 地表面温度が低いほど, 成層圏からの下向きフラックスによる加熱率は低い圏界面温度で立ち上がる.
      • 成層圏からの下向きフラックスによる加熱率の地表面温度依存性
        • 等温成層圏, 成層圏の水蒸気混合比一定, 成層圏の水蒸気混合比は小さい, ことを仮定すると, 成層圏の水蒸気分子の数は, 地表面温度によらない.
        • 成層圏中の吸収物質の数, 温度が同じである場合, 成層圏の吸収に違いを与えるのは圧力による吸収断面積の変化しかない.
        • 成層圏温度が同じ場合には, 地表面温度が高いほど圏界面の圧力は低くなる (背景大気は同じと仮定)
        • 圧力が低いほど, pressure broadening による吸収線幅は細くなり, 吸収の強い波数帯と弱い波数帯の吸収断面積の強弱は大きくなる.
        • 吸収断面積の強弱を表現した 2 bands モデルによる考察すれば, 吸収断面積の強弱が強いほど成層圏からの下向き放射による加熱率は低い圏界面温度で立ち上がる.
          • 地表面温度 320K, 360K の場合の圏界面圧力と, 成層圏からの下向き放射による加熱率の関係と整合的.
      • 太陽光による圏界面の加熱率の地表面温度依存性
        • 太陽光による圏界面加熱率の圏界面温度依存性は, 地表面温度 320K, 360K でほぼ同じ.
        • しかし, 圏界面圧力が異なることによる吸収線の広がりが, 惑星放射の場合と同じだとすると, 太陽光による加熱率も地表面温度依存性があるはず.
        • なぜ, 太陽光による加熱率は地表面温度依存性が小さいのか.
        • 吸収線幅の波数依存性を見ると, 惑星放射領域では pressure broadening が支配的なのに対し, 太陽放射領域では, doppler broadening が支配的.
        • doppler broadening は圧力依存性が無いため, 圏界面圧力が変化に対する, 太陽光による圏界面の加熱率の変化は小さい.
    • To Do
      • ストーリーをまとめる.
  • mtg 資料

木星大気の放射計算 (高橋康)

  • スケジュールの確認
    • 今月中に letter の投稿
    • ガリレオ衛星食を 1 月中にまとめる

系外惑星大研究会

  • 日程
    • 2016/2/21(日) - 2016/2/24(水)
  • Registration and Abstract submission deadline
    • 2015/12/31

次回の日程

  • 12/14 (月) 9:00-